前回のブログで「セラドン」の優雅さに触れましたが、今回は、その静かな美しさを引き立てる「光」そのものの色、ペールイエローがテーマです。
ペールイエローは、彩度が極限まで抑えられた、ほとんど白に近いごく薄い黄色です。
まるで、春の朝、カーテン越しに部屋に広がる、刺激の少ない「やわらかな日差し」を、そのまま色にしたような存在です。

ペールイエローを選ぶ心理
◇脳と心の休息
強い色、鮮やかな色は、私たちに「興奮」や「情熱」といった強力なエネルギーを与えますが、同時に脳に強い刺激を与え、疲労を蓄積させることもあります。
現代社会において情報過多な生活を送る私たちは、無意識のうちに色の刺激からも逃れようとします。
私たちがこの色を選ぶ時は、まさにこういった「刺激からの解放」を求めています。
この色が持つ最大の心理的効果は、「安らぎ」と「安心感」なのです。
◇集中力の維持
白い壁のような緊張感や冷たさがなく、かといって目立つこともありません。
穏やかに心を温めながら、作業を続けることをサポートします。
◇幸福感の基盤
黄色が持つ「希望」や「喜び」のポジティブな要素を、非常に控えめなトーンで提供するため、内面から静かに湧き出るような持続的な幸福感の基盤となります。
ペールイエローは、華やかな自己表現よりも、「自分の心身を整えること」を優先したい、という内向きの心理を表しています。
空間の質を高める「光の背景」としての役割
デザインやインテリアにおいて、ペールイエローは主役になることはほとんどありません。
しかし、その控えめな性質こそが、この色の最高の強みです。
◇空間の広がり
明度が高いため、壁面などに使用すると、部屋を明るく広々と見せる効果があります。
◇包み込む暖かさ
わずかな黄色みがあることで、冷たい印象になりがちな白を、優しく包み込むような温かいトーンに変えます。
北向きで日当たりの少ない部屋でも、この色を使えば、まるで太陽光が差し込んでいるかのような錯覚を生み出すことができます。
この色を選びたくなる時は、目立つことよりも、「空間の質」や「居心地の良さ」を重視している証拠です。
求めるのは「心の余白」
ペールイエローは「回復」を象徴する色です。
情報や刺激に溢れた日々の中で、私たちがペールイエローを求めるのは、まさに「心の余白」を求めているからです。
そっと目を閉じたくなるような、このやさしい光の色を日常に取り入れることで、私たちは疲れた心と体を静かに癒したいと思っているのかもしれません。
