かさねの色目のひとつに「雪ノ下」というものがあります。

平安の貴人が愛した花のなかでは、特に紅梅が好まれたようです。
寒さに震えるような日に、ふと庭をみると赤い梅の花に雪が積もっている・・・
いとをかし(風情があってすばらしい)
というわけで、自分たちの着るものや、届ける手紙にこの風情を表現しようとした・・・・
それが、かさねの色目で表現された「雪ノ下」というものです。
この感性を私たちは受け継いでいるのですね。
季節も感情も、色で表現する・・・・・
けれど、その場にいる全員が同じ色のかさねを着用しているのではないのです。
ある人は紅梅が重なった様子を表現したいと思い、紅梅の濃淡で表したかもしれないし、もしかしたらもっと鮮やかな色で春を表現したいと思ったかもしれない。
色の決まり事が出てくるのは、ずっと後の時代で、源氏物語の時代はおおらかに自分のセンスを表現していたのだと思います。
いずれにしても、寒さの中の季節の先取りは、早すぎても遅すぎてもダメでした。
その時、その場の空気を読むということは、この時代から鍛錬してきたのかもしれないですね。
たかえ