幸せを運ぶ色~オーキッドピンク
2026/10/29恐竜の時代から咲きつづける、幸せを運ぶ色
オーキッドピンク

恐竜と同じ時代を生きた花
蘭の歴史は、想像以上に古いものです。
ドミニカ共和国で見つかった約2000万年前の琥珀の中に、蘭の花粉をつけたハチが閉じ込められていました。
この発見から、蘭の祖先は約8000万年前、恐竜が暮らしていた白亜紀には、すでに咲いていたことがわかったのです。
今では約25000種以上が知られ、植物の中でいちばん大きな家族になっています。
なぜこの色が「オーキッドピンク」なのか?
この色名のもとになったのは、「蘭の女王」とも呼ばれるカトレアの花です。
1818年、イギリスのウィリアム・カトレーが温室で花を咲かせたカトレアは、その後長く「熱帯の蘭」のイメージそのものとなりました。
そして、その花の色が「オーキッド」と呼ばれるようになったのです。
英語で色名として記録されたのは、1915年のことでした。
オーキッドが指す色は、紫から赤紫まで幅広いのですが、その中でも白をたっぷり含んだ、淡く紫がかったピンクが「オーキッドピンク」。
カトレアの紫を、そっとやわらげたような色合いです。

貴婦人たちを夢中にさせた色
この色がとくに愛された時代が、二つあります。
ひとつは19世紀、ヴィクトリア朝のイギリス。
「蘭熱(オーキッドデリリウム)」と呼ばれるほどの収集ブームが起こり、お金持ちたちは探検家を世界中に送り出して、珍しい蘭を探し求めました。
蘭は富と贅沢の象徴となり、同じころ流行した紫系の色とともに、上流社会をあでやかに彩ったのです。
ヴィクトリア朝の社交界を照らした「洗練のピンク」
かつてピンクは、赤を薄めた色として扱われていましたが、19世紀後半に合成染料の技術が進歩すると、紫がかった繊細な中間色が布地の上に再現できるようになりました。
派手すぎず、かといって地味にならないオーキッドピンクは、夜の舞踏会のガス灯の下で肌を最も美しく見せるドレスの色として、貴婦人たちの間で大流行しました。
もうひとつは、1940〜60年代のアメリカ。
カトレアのコサージュが大流行し、映画スターや母の日のお母さん、プロムに出かける女の子たちの胸元を飾りました。
ファーストレディのメイミー・アイゼンハワーは、カトレアをつけずに人前に出ることはほとんどなかったということです。
1950年代ハリウッド黄金期のグラマラス
映画の世界でも、この色は特別な輝きを放ちます。
1950年代、オードリー・ヘプバーンやマリリン・モンローといったアイコンたちが、サテンやシルクのオーキッドピンクのドレスを身にまとって登場しました。
従来の「無邪気な少女のピンク」から脱却し、「知性と大人の色香を兼ね備えた女性の色」へとイメージをアップデートしたのです。
ピンクの持つ温もりと、紫の持つノーブル(高貴)な気品。
その両方を絶妙なバランスで併せ持つオーキッドピンクは、身につけるだけで背筋がすっと伸びるような不思議な力を秘めています。
「ピンクを着たいけれど、可愛らしすぎるのは少し照れくさい」
そんな日には、熱帯の奥深くで咲き誇る蘭の花のような、凛としたオーキッドピンクを手に取ってみてはいかがでしょう?
いつものワードローブに、心地よい華やぎと自信を運んでくれるのではないでしょうか。
カラースクールT.A.A
藤田たかえ でした