「オフホワイトという色は、色の世界には存在しない」と言われたら驚きませんか?
「えっ、お店でよく見るよ!」と思いますよね。今回は、そんな不思議なオフホワイトの正体と、ある歴史的な文化運動との深い関わりについて、優しく紐解いていきましょう!
実は色の名前じゃない!?「オフホワイト」の正体と始まり
まず最初の驚きは、「オフホワイト」は特定の1つの色を指す名前(固有名詞)ではないということです。
「オフホワイト」という言葉が英語圏で使われ始めたのは、今から約100年前、1920年代(20世紀初頭)のことだと言われています。
第一次世界大戦が終わり、新しい時代のファッションやインテリアが流行し始めた頃のこと。
「真っ白ではない、ニュアンスのある白」を表現するために生まれた言葉です。
カラーパレット(色見本)をいくら探しても、「これが100%正確なオフホワイトです」という定義はありません。
なぜなら、オフホワイトの「オフ(off)」には、「〜から少し離れた、外れた」という意味があるからです。
つまり、オフホワイトとは色の名前ではなく、「純白(ピュアホワイト)から、ほんの少しだけ他の色が混ざって、まぶしさが抑えられた『白っぽい色全般』」を指すカテゴリーの言葉なのです。
もし、私たちが「純白」の服ばかりを着ていたら、まぶしすぎて日常では少し浮いてしまいますよね。
肌馴染みがよく、誰にでも似合う「ちょっと他の色が混ざった、扱いやすい白」をまとめて便利に呼ぶために、この言葉がこれほど広く使われるようになりました。
オフホワイトと呼ばれる色は、いくつくらいあるの?
「純白から少し外れた白」がすべてオフホワイトなら、その種類は一体いくつくらいあるのでしょうか?
答えは、「人間の目では数え切れないほど無限にある」です。
ほんの少し黄色が混ざれば温かい白に、青が混ざればクールな白に、グレーが混ざれば落ち着いた白になります。
その無限のグラデーションの中から、私たちがよく知る名前がついた「代表的なオフホワイト」をいくつかご紹介します。
アイボリー(象牙色): 象の牙のような、少し黄みがかった高級感のある白。
ミルクホワイト(乳白色): 牛乳のような、まろやかで優しい白。
エクリュ(フランス語で「未加工の」という意味): 生地の原料そのものの、少しグレーや茶色が混ざった白。
オイスターホワイト(牡蠣色): 剥いた牡蠣の身のような、少し青みやグレーが入った都会的な白。
このように、自然界にある「白っぽいもの」の名前がついた色が、すべてオフホワイトという大きな家族のメンバーなのです。
「生成り色」とニューエイジ運動
オフホワイトの仲間の中に、日本でも古くから愛されている「生成り色(きなりいろ)」があります。
これは、綿(コットン)や麻(リネン)の繊維を、化学薬品で漂白(ブリーチ)する前の「植物そのままの、少し茶色がかった温かい白」のことです。
実はこの生成り色、1960年代後半から1970年代にかけて世界中で巻き起こった「ニューエイジ運動」という文化・思想の波と、切っても切れない深い関係があります。
☆ニューエイジ運動とヒッピー文化
当時、世の中は工場でたくさんのモノを大量生産・大量消費する時代を迎えていました。街には化学物質が溢れ、自然がどんどん破壊されていく。
そんな社会に対して、当時の若者たち(ヒッピーと呼ばれた人々など)はこう声を上げました。
「もっと地球に優しく、自然のまま、人間のありのままの姿で生きよう!」
この「自然に帰ろう」という精神が、ニューエイジ運動の大きな柱でした。
☆漂白しない「生成り色」が、平和のシンボルに
彼らは、化学薬品で真っ白に漂白された均一な服を拒み、あえて植物の殻の粒が残ったままの、加工されていない「生成り色」の綿や麻の服を好んで着ました。
彼らにとって、オフホワイトの一種である「生成り色」を身に纏うことは、単なるおしゃれではありませんでした。
それは、「私は地球環境を大切にし、自然とともに平和に生きていく」という、無言の強いメッセージ(意思表示)だったのです。
現代の「オーガニックコットン」や「エコ」の原点は、まさにこの時代のオフホワイトにあったと言えます。
現代のファッションとオフホワイト・・・「抜け感」の主役へ
そんな歴史を経て、現代のファッションにおいて、オフホワイトはなくてはならない王道のカラーになりました。
今のファッションでよく使われるキーワードに「抜け感」や「こなれ感」という言葉があります。
これは、「キメすぎず、リラックスしているのにおしゃれに見える」という意味です。
真っ白なシャツはカッコいいけれど、少し緊張感が出ますよね。
そこにオフホワイトを持ってくることで、全体がふんわりと柔らかくなり、着ている人の優しさやおしゃれなセンスを引き出してくれるのです。
また、現代でも「サステナブル」への意識が高まる中で、あえて過剰な漂白をしないオフホワイトの服を選ぶことは、今の時代を生きる私たちのスマートで優しいライフスタイルの象徴にもなっています。
特定の定義がないからこそ、無限の優しさで私たちを包み込んでくれる「オフホワイト」。
それは、100年前に新しい時代の空気から生まれ、50年前には自然を愛する若者たちの味方となり、今も私たちの毎日を心地よく支えてくれている、とても奥の深い「白」の物語なのです。
💡ポイント
なぜ「真っ白」は緊張するの?
知っておきたい『白』の色彩心理
汚れひとつない真っ白(ピュアホワイト)な空間や服を見ると、背筋がシャキッと伸びるような気持ちになりませんか?
色彩心理学において、白には「清潔」「純粋」「新しい始まり」といった、とてもクリーンで爽やかなイメージがあります。
新しいノートの1ページ目を開くときのような、リフレッシュした気持ちをくれる色です。
しかしその一方で、白には「完璧主義」「緊張感」「冷たさ」という心理的効果も隠されています。
実は、真っ白は光を100%跳ね返すため、人間の目や脳にとても強い刺激を与えます。
さらに、私たちの心の中に「少しでも汚してはいけない」という引き締まった心理が働くため、無意識のうちに緊張して疲れを感じてしまうのです。
病院の白衣を見て、どこかドキドキしてしまうのもこの緊張感が原因の一つ。
だからこそ、少し他の色を混ぜて刺激を和らげた「オフホワイト」が日常で愛されるのです。
白の持つクリーンな良さを残しながら、私たちの心をホッとリラックスさせてくれる、人間に一番優しい「白」・・・それがオフホワイトです。