ヴェネチアンブルー

イタリア・ヴェネツィア。
石畳の小道を抜けると、突然ひらける水の都。
ゴンドラがゆるやかに行き交い、
古い建物の壁に、光と影が静かに揺れる。
その水面に映る青こそ、ヴェネチアンブルー。
青というよりも、少し灰を含んだ青緑。
かつて、ヴェネツィアの職人たちは
ガラスやモザイク、絵の具の中にこの色を閉じ込めてきました。
青には「思考を鎮める」「心を整える」力があると言われます。
でもヴェネチアンブルーは、それだけではない。
見つめていると、心の奥に眠っていた“感情の波”が
ゆっくりと動き出すような、そんな静かな力を持っています。

コバルトなどの着色剤を用いた彼らの青は、ただ鮮やかなだけでなく、光を透過するガラス特有の「深み」と「複雑さ」を持っています。
太陽光の下、角度によって水面のように揺らぎ、見る者に異国情緒や洗練された美を感じさせます。
この色は、単なる自然の色を再現したものではなく、ガラス職人の高度な技術と、色を自在に操る商業的な力によって生み出された人工美であり、当時の人々に新しい価値観を与えたのでした。